食品卸大手の国分㈱は,2013年10月開設の福岡低温センターに,ヴォコレクトジャパンの音声認識ソリューションを導入した。
同センターは国分および国分フードクリエイト九州㈱(KFC九州)が,3PL 業務を委託する福岡吉田海運㈱の初めて構えた2層階建屋に賃借する形で入居(福岡吉田海運では「須恵物流センター」として登録)。ドライ,冷凍,冷蔵の3温度帯に対応する汎用施設として構築。九州自動車道を駆使することで九州全土をカバーする食品物流拠点となった。
新センター開設の経緯は,国分が新たに㈱阪急キッチンエール九州(HKY九州)の物流業務を受託したことに端を発する。国分側では同社業務の受託を機に,新センターを核にした福岡地区のネットワークを再構築し,顧客の輸送効率を向上させる狙いがあった。
HKY 九州ではこれまで,自社物流センター(福岡県)でコンベヤを設置した庫内オペレーションを実施してきた。「ところが新センターにコンベヤを設置したら,物理的に阪急キッチンエールさん以外の荷主さんの業務ができないことが判明しました」と語るのはKFC九州の山本博史専務だ。コンベヤが庫内スペースの半分以上を占有することをレイアウト案で確認したのだ。
これにはKFC九州も庫内作業を請け負う福岡吉田海運も頭を痛めた。何か新たなマテハンの工夫が必要なのだが,何かは見えてこない。そこで庫内業務責任者である福岡吉田海運の安井豪志・物流事業部次長は,コンベヤのほか,GAS(ゲートアソートシステム)の資料を取り寄せたほか,ピッキングカートのプレゼンを受けたが,どうもピンとこなかった。
立ち上がり時からHKY九州のほか,国分のチルド商材を扱うKFC九州,大型ディスカウントストアM社のチルド商品,この3社の荷主の業務を扱うことは決定しており,汎用性に問題があったからだ。
そんな折,音声物流ソリューションを提供するヴォコレクトジャパン㈱から,パートナー企業の1社である㈱インフォセンスを紹介された。インフォセンスは山九㈱の情報システム子会社で,ITソリューション事業を展開。ヴォコレクトボイスの販売から導入・保守まで一括し営業展開を開始したところだった。
安井氏は音声ソリューションが固定設備を必要としない点に着目した。「レイアウトフリーで,固定ラインを作らないで済む」と安井氏は目を輝かせた。
音声ソリューションのメリットはさまざまあるが,安井氏は山本氏に荷捌きスペースが有効活用できる利点を説き,その報告を聞いて確信した山本氏は国分本体,そしてHKY九州の説得に回った。
HKY九州事業統括部の松田訓部長代理は「固定された棚での運用が不要となり,無限に汎用性を持たせることができる」点を評価した。
「常時設置型設備の回転率アップという発想ではなく,棚自体の移動を可能にしたのが音声でした」と山本氏は振り返る。
このように音声システムはまず,ロケーションの自由度と曜日波動に対応できる優位性を持つ。コンベヤ方式であればアイテム数は棚数で決定されてしまうが,音声ならフリーロケーションの荷捌きスペースで,アイテム数を拡大する拡張性がある。また「正確性が高くなるとの直感も働いた」と山本氏は語る。
こうして,福岡低温センターに音声認識ソリューションの導入が決定。複数荷主の商品を時間で区切り,これだけの規模で扱う稀有な事例が誕生した。
打ち合わせは13年2月に開始されたが,導入決定は5月,稼働開始は10月というタイトなスケジュールだった。音声ソリューションのシステム概要図は図表2の通り。
図表1福岡低温センターの概要
所在地 | 福岡県糟屋郡須恵町植木1448番地 |
敷地面積 | 20,873㎡(6,314坪) |
延床面積 | 11,748㎡(3,554坪) |
スペック | ●梁下有効高:5.5m ●プラットフォーム高:1.0m ●ドックシェルター:11基 ●最大接車台数:20台 ●垂直搬送機:1基 |
取扱アイテム | 7,000アイテム |
取扱物量 | 約15,000ケース/日 |
倉庫スペース(1F) | ●冷凍(-25℃):261坪 ●冷凍(-30℃):16坪 ●冷蔵:1,026坪 ●常温:574坪(計1,877坪) |
図表2Vocollect Voiceのシステム概要図