建材部品物流/(株) LIXIL 音声物流でピッキング効率と作業
品質向上、人手不足解消にも効果
粕川物流センター

物流

初期導入で生産性46%アップ 導入の成果を社内で横展開

㈱LIXILは,2011年にトステム㈱、㈱INAX,新日軽㈱,サンウエーブ工業㈱,東洋エクステリア㈱の5社が統合して誕生した建材・住宅設備の最大手企業だ。

同社では,物流現場作業の効率化を図るためにIT技術の活用を模索する中,音声認識技術の進歩に伴い音声指示ピッキングの導入企業が増えていることに着目。情報システム本部(旧IT推進本部)が企画し,2011年にヴォコレクトジャパン㈱が提供する音声物流ソリューション「Vocollect Voice(ヴォコレクトヴォイス)」を採用した。

最初の導入現場となった茨城県下妻市の部品センターでは当時,金属製建材部品の入荷から入庫,ピッキング,出荷,棚卸に至る一連の庫内作業にVocollect Voiceによる音声物流の仕組みを適用した。そのうちピッキング作業では,従来の紙のリストを元にPDAを使いながらピッキングしていた作業と比較して,生産性が46%も向上する効果があった。その他の作業の生産性向上も合わせ,計2名の“生人化”に成功した。

この生人化という言葉は誤字ではない。同社では人を省く“省人化”ではなく,人を生み出すと書く。改善することで削減した人員を生かし,次の改善につなげるという意味がある。

この実績を得て,2012 年からは社内への横展開に着手した。その展開先の一つが今回取材した㈱LIXIL 物流の粕川物流センターだ。

同センターは群馬県前橋市に位置し,併設する粕川工場をはじめとして国内外で生産されたエクステリア商品を保管・配送する物流拠点となっている。ここでいうエクステリア商品とは,カーポートやバルコニー,テラスなど。施工前の部品の状態で全国へ配送を行う。同センターから直営店や販売代理店を経由して,最終的に施工業者に届く流れだ。こうした物流センターは全国に15拠点あり,受注した商品を当日発送し,翌日には届ける物流体制を確立している。

エクステリア商品は施工前の未組み立て部品といえども大型のものばかり。そのためセンターの庫内作業はフォークリフトによる荷役が中心だ。しかし「小物系」と呼ばれる細かい部品も多数存在し,その数は約1万点に及ぶ。この小物系についてはフォークリフトを使わず,人手を使ってピッキングを行っていたことから,VocollectVoiceの適用対象となったものだ。

2011年11月,茨城の部品センター見学から始まった導入検討は,テストデータを使ったトライアルなどを経て,翌2012年4月に正式導入を決定。同年10月に本格導入となった。導入数は音声端末計24セットである。

■画像:1 トークマンとヘッドセットを装着した作業者

2桁の棚番を元にピッキング作業者が迷う時間を解消

図表1音声ピッキングの流れ

使用機器としては,ヴォコレクト製の音声端末「Talkman(トークマン)」と専用ヘッドセットを作業者が身に付ける【画像:1】。それに加えてカートに備え付けのバーコードスキャナとラベルプリンターを各作業者で個々に使用するのが全体構成となる。作業は,音声システムサーバからの音声指示に従って配送先単位のオーダーピッキングで進める(図表1)。この音声システムサーバは基幹システムからピッキング指示データを受け取って,基幹システムにはピッキング実績が反映される仕組みだ。

まず音声システムから業務内容を問われたら,番号で回答して業務を選択。するとピッキングすべき部品のロケーションが指示されるので,カートを押して移動する。作業者が「次(つぎ)」と応答すると,移動先のロケーションでピッキングする部品の指示が来る。指示内容は,該当の部品が入ったケースのチェックデジット(棚番)と数量だ。

部品を必要な数だけピッキングしたら【画像:2】,バーコードスキャナで部品に記載されたバーコード(商品コードとロットバーコード)をスキャンする【画像:3】。それに応じてカートに備え付けのラベルプリンターから配送ラベルが都度印刷されるので,部品に貼付する【画像:4】。このスキャンとラベル貼付の作業は部品1点ごとに繰り返し行う。

ピッキングが終わったら,出荷ピットに一時保管する【画像:5】。出荷ピットの各パレットは配送コースごとに振り分けられ,トラックに積み込んで出荷となる。

これら一連の作業について現場責任者を務める岩井早瀬氏は,「指示を受けながら移動する“ながら作業”ができます」と,最初の移動の段階から生産性向上にメリットがあると指摘する。

従来は最初に配送ラベルを印刷し,そこに記載されたロケーションを確認して移動していた。当然ラベルを読む間に立ち止まる時間が発生する。その節約効果が大きいという訳だ。これには「1秒でも待つことは,それだけ人件費のコストがかかる」という同社の基本的な考え方が基礎にある。

さらに岩井氏は,移動中にロケーションの確認でラベルに目線が移動することがないこと(アイズ・フリー)にも触れ,「安全にも気を配れる」メリットを強調する。

ピッキングの際,英数字が無機質に並ぶ商品コードではなく,2桁の棚番で指示を受けるので,商品を探し当てる時間も早くなった。現場責任者の今井正紀氏は「商品コードと違って棚番なら迷う時間がありません」を語る。

【画像:6】を見てほしい。部品の入った段ボールには棚番と共に商品コードが併記されている。何桁にも及ぶコードを目安にピッキング対象を探すより,大きく明記された2桁の番号を手がかりにする方が作業しやすいのは明らかだろう。

スキャンする度に,配送ラベルが1枚ずつ印刷されるようになった効果も大きい。従来は200枚程度のラベルを最初に印刷していた。印刷が終わるまで待ち時間が発生し,作業者の行列ができてしまうことがあったが,今は待たされることはない。

このラベルプリンターには東芝テック㈱製を使用している。配送ラベルの印刷時に裏紙が自動的に剥離するので,作業者は手に取ってそのまま部品に貼付できる【画像:5】。この仕組みの実現に当たっては,ラベル用紙を詳細に吟味したほか,プリンター内部のローラーを変更するなど,試行錯誤を重ねて実現したものという。Vocollect Voice導入でシステム構築支援を担当した㈱ケイ・アイ・エス・エスの代表取締役社長・田中和弘氏によると「当初はラベル印刷のスピードアップや紙詰まりの防止で苦労されましたが,今回の導入に企画から携わったLIXIL 情報システム本部と東芝テック社の努力により解決しました。いわばLIXIL仕様になっています」ということだ。

■画像:2 両手が自由(ハンズ・フリー)なのでピッキングがしやすい ■画像:3 ピッキングした部品のスキャン ■画像:4 配送ラベルの貼付
■画像:5 出荷ピットの様子 ■画像:6 棚番が付与された

ミス減少で品質維持に貢献、外国人雇用の円滑化に寄与

■画像:7 カートに埋め込まれたラベルプリンター

最初のトライアル時には,従来比24.6%の生産性向上効果があると試算していた。試算時における“生人化”の効果は4人。23人の人員配置を19人にできると考えられていた。本格導入後の現在,目論見通りの実績を挙げているということだ。さらにセンター長の秋葉実氏は,生産性に加えて品質面での貢献も評価する。「当日の受注分を次の日に届けるためにかなりタイトなスケジュールで作業をしていますが,間違えないことが絶対条件。1件でも間違えると信用を失ってしまいます。Vocollect Voice導入後,ミスの発生は年間で1件あるかないかです」と語る。

秋葉氏はミスにつながる例として,以前は配送ラベルを最初にまとめて印刷していたことが災いして,別のラベルを間違えて貼ったりすることがあったと教えてくれた。ピッキング中にラベルを紛失してしまうこともあったという。
ミス防止には,ピッキングした部品を一つひとつスキャンして確認していることも奏功している。

前出の田中氏は,「ピッキングした部品のバーコードを全部スキャンするのは正確性を確実に担保するためです。音声物流の場合,作業者がコードを読み上げる確認方法もありますが,絶対に間違えないことを重視しました」と語る。作業スピードを最速にしていくために,人の動きと音声システムとのやりとりに秒単位の配慮をした結果として,この方式に行き着いたということだ。

同センターでは多数の外国人従業員が作業に従事しており,本システムも日本語とポルトガル語で運用している。こうした多言語対応(フリー・ランゲージ)もVocollect Voiceの特長で,現在までに36か国の言語対応が可能になっているという。生産性や品質の向上に加えて,この特徴は人手不足問題の解消にも寄与する期待が大きい。外国人労働者の雇用は国の制度上,限定的になっているが,今後本格化することがあれば,スムーズに活用できるからだ。この人手不足問題への貢献については,田中氏によると,人材の定着率が上がったというデータもあるという。

関連して,新採用の作業者がすぐ活躍できることが挙げられる。秋葉氏は「従来のハンディターミナル主体の作業の場合,新人は色々なことを覚える必要がありました。Vocollect Voiceを導入したことで,採用後すぐピッキング作業ができるようになりました」と話す。複雑な操作が必要ない“ストレス・フリー”も音声ピッキングならではのメリットだ。

初心者とは逆に,熟練作業者のさらなる作業性アップに活かせる機能もある。トークマンでは音声指示の発語スピードを変えることが可能だが,多くの熟練作業者は「最速」設定で作業をしているというのだ。その分,ピッキングも最速で進む。「我々がちょっと聞いただけでは分からないくらいの速さですね」と,今井氏は舌を巻く。

Vocollect Voiceは現在,岡部物流センター(埼玉県深谷市)など複数の物流センターでピッキング業務に導入されている。いずれも台車を使った人手による業務だが,将来的にはフォークリフトのオペレーターが使うことも視野に入れる。同社としては,安全面を考慮しながらさらに横展開にチャレンジする考えだ。